今回は年間50本の芝居を観劇するまつださんとお話してみました。
私自身10年程演劇を作る側の立場に立っていましたが、今は年間5本でも観ればいい方、50本なんてよう見やんわという感覚なのでまつださんをすごく尊敬してしまいます。
仕事とプライベートを分けるコツ、限界へのアプローチの仕方など、面白い話が聞けたのでぜひシェアしたいと思います。
・会社員として毎日働きながら年間50本観劇
・自宅浪人ののち国立大学に入学を果たすも二留
・筋トレ習慣は無いがプロテインを飲み続けている
きしこ:こんにちは~
まつださん(以下敬略称):こんにちは~元気?
きしこ:元気ですよ、日々限界ですが
まつだ:おやおや
きしこ:早速ですけど、観劇本数年間50本ってすごいですよね。単純計算で1週間に1本観てるかんじですか?
まつだ:そうやなあ、一週間に1本弱?かな
きしこ:すごいなあ。note読みましたよ。所感をまとめてくださっていてとても参考になります。
まつだ:嬉しい~。
限界だと演劇は楽しめない?
大劇場と小劇場、限界に向いているのはどっち?
きしこ:私、限界に飲まれているときに家族の誘いで宝塚歌劇を観に行ったんですけど、全く楽しめなかったんですよね。
まつだ:ほう、それはどうして?
きしこ:多分理由は2つあって、1つめが他の観客との差を感じてしまったことですね。
まつだ:なるほど?演劇って見るものに没入できるエンターテイメントやから、他の観客のこととか考える暇なさそうな気がするけど。
きしこ:没入できていたら他の観客のことなんて考えなくて済んだんでしょうけど、没入できていないから「ほかの人はこれに熱狂出来ているんだな」と思っちゃって。
まつだ:なるほど、それは悲しいことだなあ。
きしこ:今思えば、限界に飲まれる人間を見かねた家族が気晴らしになるかと大劇場に連れてくるってよくあるシチュエーションだと思うので、他の観客のことを考えたというより、「自分の理想の観客になれなかったことへの失望」だったかもしれません。
まつだ:無意識に理想像を作ってたのかも。
きしこ:そうなのかも。それでもう1つがその没入できなかった理由のようなものなんですが、キラキラがすごくて圧倒されてフリーズしてしまったということですね。
まつだ:大劇場は大きい分情報量が多いからな。
きしこ:そうなんですよ。舞台装置も役者も音響照明も、すべての量がすごいですから。
まつだ:その点小劇場はコンパクトやし見やすかったかもしれへんな。
きしこ:なるほど?
まつだ:実際数歩進んだら舞台やし、目の前で人間が生きてるからその感覚にもっと集中できたかもな、と。まさに日常の延長にあるエンターテイメントというか。
きしこ:たしかに。実際演劇をやっているときにアンケートで「私の息遣いから物語に没入できた」とコメントしてくれた方がいました。
まつだ:良いことやんね。
きしこ:他の人間の生に感覚が集中できていたら、もうちょっとプラスになるものが得られていたかもしれませんね。
演劇をみることのメリットって?
きしこ:まつださんの考える演劇を観ることのメリットって何だと思います?
まつだ:やっぱり判断しなくていいことじゃない?
きしこ:判断しなくていいこと。
まつだ:日常とか仕事って、どうしても判断の連続だし、その点演劇は座って観てるだけ。自分で何かをしなくても何等かが起こるから。
きしこ:たしかにそうですね。それで美しいなーとか面白いなーとか、感じ取れるものを感じて心が動かされたり。
まつだ:そうだなあ。別に心を動かす必要はなくて、結果的につまらなかったな、って感じることもあるかもしれないけど、それでも自分が行動できたことに変わりはないから。
きしこ:なるほど。
まつだ:去年は野外演劇を散歩みたいな感覚で見ていることが多くて、ただ芝居を観るだけじゃなくていろんな町にいくきっかけになるんだよね。いわば小旅行気分というか。
きしこ:小旅行ですか。
まつだ:隣の町だったとしてもそれは移動だし。観劇を移動する口実にして、移動することで非日常が飛び込んできて。
きしこ:それは面白そうですね。
まつだ:うん。だからあちこちの劇場にいってみるのがいいかも。今まで行ったことのなかった場所でやってる演劇とか。
きしこ:なるほど。それはたしかに、いつもと違う空気を吸うって心理的にも良いことみたいですし、効果的かも。
まつだ:心理的にも良いことしていこうな。
きしこ:内容的にはどうですか?
まつだ:内容的には、実際色々見てると芝居の中にいる人のほうが大変な目にあってることが多いから、見比べると日常の振れ幅ってあんまり大きくないのかもって思えたりする。
きしこ:なるほど。どうしても一つの視点であれこれ考えちゃって不安とか悩みが大きく大きくなっていきがちだけど、演劇を通して相対的に考えてみることもできそうですね。
まつだ:芝居みると世界広いなって思うよ。
まつださんの限界について
自分を守る絶対的なルール
きしこ:話が少し戻りますが、週に一本演劇を観たということは、もう観劇が習慣になっている感じですか?
まつだ:そうだね、習慣になってる。水飲むみたいな感覚で生活に溶け込んでるな。本当に趣味。
きしこ:趣味と習慣って重なるんですね。
まつだ:そういうもんだと思うよ。趣味だから習慣になることもあるだろうし、習慣が気付けば趣味になっていたってこともあるだろうし。
きしこ:最近、趣味がないなって悩んでいたんですけど、習慣から考えると私は文章を書くのが趣味かもしれません。日記とか。
まつだ:脚本書けよ。
きしこ:脚本書くかあ~。
まつだ:まあそういう感じで芝居を見ることは決まってて、限界は芝居より優先されない。
きしこ:なるほど。絶対的なルールがあるんですね。
まつだ:限界って仕事とかコミュニケーションとかが優先されることで起こると思ってて、プライベートのやりたいことはそれより優先されないから、さっききしこが言ってたような、限界に飲まれて演劇が楽しめない、みたいなことがないのかも。
きしこ:なるほど、それってどうしたらいいんですかね。
まつだ:深く考えず、予定をいれて必ずそれ通り動くことを目標にしてみるのがいいかも。例えば芝居は予約いれたら行くしか無いし。
きしこ:いかなる状況でも行かなきゃ、っていうものを作っておいてそれ通りに動けたら達成感もありそうですね。
まつだ:そういうこと。
限界と共に生きるためのヒント
きしこ:まつださんって限界感じるときありますか?
まつだ:ないな。
きしこ:ないんだ……しんどい時とかもあんまなかったかんじですか。
まつだ:しんどい時はあるよ。例えば、仕事で一緒に案件入ってた先輩がぶっ倒れたときとかは、頼れる人もいなくて毎日終電近くまでぶっ続けみたいな感じでしんどかった。
きしこ:大変だ。
まつだ:でもまあ、身体的にはしんどかったけど、食事と睡眠時間だけは確保してたからメンタルには限界は来なかったかな。
きしこ:すごい!私だったらすぐメンタルにきそうです。
まつだ:あとは浪人中とか。成績は伸びないけど受験日は迫るし……っていう状況はしんどかったな。
きしこ:ありますよね。特に浪人中は焦りも現役より感じやすいでしょうし。
まつだ:うん、まあでも精神面での限界は来なかったかな。
きしこ:なぜ!!!まつださんって、仲良くさせてもらってる感じ、「一つのことをしっかり考えない」人ではないですよね?
まつだ:そうだね。一つのことは考えがち。でも考えるにしても楽しいことか、考えることで何かが発展するようなことしか考えないようにしてるよ。
きしこ:ということは、しんどいなあって思うことにはあんまり触れないようにしてますか?
まつだ:いや、しんどいことでも、考えることで何かが発展するなら考える。ただ病む予感がするときは積極的に気分を変えるかな。
きしこ:そうなんですね。
まつだ:限界に飲まれるときって、漠然とした不安に押しつぶされるパターンが多いと思うんだけど、それって「漠然と」してるから膨らんでいくものだと思うんだよね。
きしこ:はい、まさにそうです。
まつだ:ぼや~とした何かが広がってしんどいって言うときは、そのぼや~とした何かを見つめるのをやめる。
きしこ:やめられたらいいんですけど、なかなか難しいです……。
まつだ:見つめるのをやめて、実際に「触る」んだよ。触ったら形がわかるし。
きしこ:「触る」ですか。分析する感じ?
まつだ:いや、分析じゃなくて、本当に触るイメージ。
きしこ:む、難しいですね。
まつだ:例えば山で霧がかかってて先が見えない状態でも、歩みを進めてみる。そしたら今までと同じように土を踏みしめる感覚があって、生活圏から連続している道だってことがわかる。そんなイメージでぼや~っとしたものも触ってみる。
きしこ:形が無い分難しいですけど、今まで単純に「考えて」いたアプローチとは全然違いますね。山を歩くイメージでぼや~っとした不安を「触って」みる……なんだか面白そうです!最後にとてもまつださんらしい話が聞けた気がします。
まつだ:それは良かった。よく食べよく遊びよく寝て生きていってくれよな。
いかがでしたか。
私自身まつださんの話から学ぶところがとてもあったので、ここまで読んでくださったあなたにも何かプラスになる一文があればいいなと思います。
これからも不定期でインタビューをしてみたいと思いますので、楽しみにしていてくださると嬉しいです。
興味のある方はまつださんのnoteも是非見てみてくださいね。