ジェンダーの話:Xジェンダー(FtX不定性)という個性の自覚が感じさせた変化

LGBTQ+という言葉をはじめ、最近になって性的指向や性自認について色んな言葉が作られました。中でもXジェンダーという言葉は日本で生まれたものだそうですね。不思議です。

人間を分類する言葉が増えれば増えるほど、それで少し生きやすくなる人もいれば、逆に窮屈に感じる人もいるでしょう。

私は少しでも違和感があるとそれについて延々と考えてしまう傾向があるので、自分の当てはまる分類を見つけることで思考に区切りをつけましたが、自分を無理に型にはめる必要はないとも思います。

しかしせっかく型を見つけたので、今回はその私の個性「FtX不定性」について、自覚とその後感じた変化のお話をします。

一例に過ぎませんが何かの参考になれば、そして性自認について悩んでいる人の気持ちが少しでも楽になればいいなと願ってお話しします。

もともとシスジェンダー(身体的な性別と心の性別が一致している人)として生きてきたのに急に性自認が変わってしまった。そんな人間が感じた変化のすべてです。

Xジェンダー・不定性とは

Xジェンダーとは端的に言うと「常に性自認が男女のいずれかであるとは限らない」人、またはその個性のことです。

未だ性別が男女の二つしかないと考える人が多い世の中において、Xジェンダーは性的マイノリティ(セクシュアルマイノリティ)です。はやく多様性が普通になって、セクシュアルマイノリティなんて言葉も消えたらいいのにな。

身体的に男性として生まれて性自認がXジェンダーの人のことをMtX、身体的に女性として生まれて性自認がXジェンダーの人をFtXと言ったりします。

男女以外の性別を包括的に指した言葉なので、Xジェンダーと一口に言ってもさまざまな人がいます。

私は中でも不定性と呼ばれるカテゴリーに属しています。

Xジェンダーの不定性とは「性自認が一つに定まらず、特定の性のあいだで揺れ動いている」人、またはその個性のことです。

これもまたバリエーションが豊富なのでいろんな人がいますが、私の場合は「女性」と「中性(男女の中間あたり)」を行ったり来たりしています。

Xジェンダーは病院で診断を受けて判明するものではないので、自分の違和感との対話で行きつく結論の一つです。性別について色んな個性があることを知り、その中で最もしっくりきたのがXジェンダーでした。

Xジェンダー自覚のきっかけ

女の子なんだから?女の子として?

二社目で仕事をしていた時のこと。内勤で他の社員と楽しく話しているとき不意に「女の子としてどう思う?」と話題が飛んできました。

え、そんなの言われてもわかんないです!!!

と反射的に思ったときに、なぜ?と我に返りました。私女の子だと思ってたけど、違うのか?女の子なのに、どうして女の子としての意見が言えないんだ?

そうやってモヤモヤしながら現場に出たとき、上の立場の説法大好きおじいちゃんが私にこう言いました。

「女の子なんだから周りの男性にニャンニャン言って色気で動かしなさい」

う、う、う、うるせ~~~!!!

これは今思い出しても吐き気がします。性自認が完全に女性であったとしてもこの言葉は許せなかったでしょう。

こういう目で女性を見ている人間が上の立場にいることに腹わたが煮えくり返っている一方で、「なんで私が女性として扱われなきゃいけないんだ」と思いました。女性として怒りを感じるというより、私が女性であると決めつけないでほしい、その気持ちが大きかったことに衝撃を受けました。

性別非公開は悪いこと?

会社を辞めたあと転職サイトに登録し気になる企業に話を聞きにいったことがありました。その転職サイトでは性別の選択肢に「非公開」があったので、自然と非公開を選びました。

するとその点について経営者がこう言ったのです。

「性別を非公開にしているのはおかしいよね」

お前は!!意味もなく!!非公開にしたと!!思ってんのか!!!!男性でも女性でもないから非公開しか選択肢がなかったんだ!!!あれ!!?私って男性でも女性でもないの???

そうしてやっと、Xジェンダーであることをはっきりと自覚しました。

思い出すと嫌な記憶ですが、自分のモヤモヤを解消するきっかけになったと考えれば、悪くない経験だったのかもしれません。

私は私のままでいいと思える言葉

不定性の自覚はきっかけがあったというより、Xジェンダーについて調べに調べているなかで最も自分にしっくりきた分類だったことで自覚に至りました。

お話したように男でも女でもなくて違和感に悩む日もあれば、性別欄で女性にマルをつけるのに抵抗のない日もありました。

日によって、気分によって性自認が異なるなんてある?一時の気の迷いかもしれない、なんなら病気かもしれないと疑う私に、あるよ、大丈夫だよ、自分の他にもそういう人がいるんだよ、とその言葉は存在することで優しく教えてくれました。

苦しんだ自分は本物だから

Xジェンダーについて調べると、検索サジェストに「流行り」「偽物」「中二病」などの言葉が出てきます。カミングアウトの仕方によるところもあるとは思いますが、ある程度成長してから性自認に違和感を覚える人に対してこういった印象をもつ人も中にはいらっしゃるようです。

カミングアウトについては以下のページでお話ししていますので、よかったら覗いてみてください。

私はもともとシスジェンダー女性として生きてきましたし、はじめは自分でも疑っていました。

でも調べてみると性自認自体、流動的なものみたいです。グラデーションと呼ばれるみたいですが、性自認が変わったり、あるいは戻ったりする人も多く存在するみたいです。

それにもし「流行り」に乗っかってるだけなら、こんなに苦しむことはなかったはずです。

どうかたくさん傷ついて不安になって苦しんできた自分を認めてあげてください。もし過去の自分に会えるなら、自分自身を疑って心配になっているときの私にそう言ってあげたいです。

FtX不定性を自覚してからの変化

ちょっとだけスッキリした

違和感の原因がわかったことでちょっとだけスッキリしました。

自覚したからといって環境は何も変わりませんが「自分はこうだから、こういう風に感じるんだな」と認識できることで、ぶつかって傷つくことが減り、受け流すことができるようになりました。

理解のない人に対しては、「ククク……目の前に当事者がいるとも知らずに……」と忍者気分で面白がることもあります。

そういう余裕が生まれたのが一番、自分の変化をしっかり調べて認識することができて良かったなと思うポイントです。

メイクやファッションが今まで以上に楽しくなった

外見について何か手間をかけることは今までも割と好きでしたが、その楽しみが増えたように思います。

メイクについては、それまで女性のメイクばかり参考にしていたのを、男性の顔を見て研究してみたり、中性メイクを調べてみたり、バリエーションが増えてとても楽しいです。

ファッションについても「最近までこの服が好きだったのに、もう趣味が変わっちゃったのかな」と悩むことがなくなり、その日の気分に合わせて自由に着替えられるようになりました。

ただ女性の時と中性の時とで私は好みが若干違うので、洋服の数は増えました……。まあ必要な出費と捉えましょう!

まとめ:どんな自分でも認めてあげるのが一番大切

はじめにも言いましたが、自分を無理に型にはめる、カテゴリーに分類する必要はありません。

自分の性自認が「わからない」ままにしておくのも一つの選択です。私はそういうあなたも好きだしすごく尊敬します。私にはできなかったことだから。

大切なのは、どんな自分でもまず認めてあげることだと思います。

日々目まぐるしく変化する世の中で生きているのだから、自分もどこかしら変化する部分があってもおかしくないですよね。

このお話が少しでもあなたにプラスであったら嬉しいなと思います。

これからも色んなお話をしていくので、楽しみにしていてくださいね。

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